ダハブ Dahab

◆ ダハブ DE ダイブ

ダハブに向かうタクシーに指定した宿「セブンヘブン」の部屋に荷物を降ろす。空き部屋のうち 安い部屋(一泊20EP)は1室しか空きがなく、そこはアキラ君に譲る。私は少し値が張るが室内シャワーがついた部屋を50EPでかりることにした。

そして、夕食がてら さっそく町に繰り出してみるが、宿を出た瞬間にそのリゾートぶりに正直驚いた。

タクシーの到着は宿の裏口、海とは反対側から入ったため、海沿いの風景を見ずにチェックインしていたのだ。海側の出入り口から一歩 足を踏み出した瞬間に 過去訪れた ビーチリゾートと同じ風景に、まさかエジプトでこんな風景に出会えるとはと、驚く自分がいる。 タイならば コサムイ、クラビ、プーケットに準じるだろうか。


町の風景はリゾート地として、もしかすると特徴のないものかも知れないが、海の美しさについては ここまでの旅で見たなかで最高のものかもしれない。


海沿いにはレストランが軒を連ね、海の風景と かなり良くできた料理を給している。写真はチキンカレー 30EP。
料理を頂いている最中にゆっくりと陽が落ちて暗くなっていく。ここでカップルとして食事でもしていれば文句なしに最高なのだろうが、不運(?)にも私とア キラくんの間に間違いは起こりそうにない。


翌朝5時、対岸のアラブ首長国連邦の山脈から昇る太陽を待ちつつ、早朝の海辺にて蚊と格闘する。
太陽が出たのは、私の時計が午前6時00分を指した瞬間だった。


泊まった部屋は海側にほど近く、宿の中でも良い部類の部屋となる。エアコンは付いていないが、ファンだけでも夜間は涼しく過ごせる。これなら海で泳いだ後 もすぐに部屋に戻り、シャワーを浴びることが出来る。


そして 幸か不幸か 窓とドアの真っ正面にはダイバー用の設備が整っていたのである。 自分には無縁と思っていたダイビングの世界、それを楽しむ人々が部屋の窓から数メートルの距離にいるのだ。


翌朝の朝食を 同Hotelの食堂で頂いていると、窓の無い壁の向こうから日本語でダイビングについて語るインストラクターの声が聞こえてきた。生徒(?)は日本人らし い。この時は「へ〜。日本人のインストラクターがいるんだなぁ。」程度にしか考えていなかった。


転機が訪れたのは朝食後だった。
いつも通り同じ宿に泊まる人からダハブの地域情報を教えてもらおうとしたのだ。このときは幸運にも日本人と知り合う事が出来た。彼はマサさんといい、ちょ うどダイビングライセンスを昨日取得したばかり。最初は ジュースの価格やオススメ食堂の情報を得られれば、と考えていたのだが、話は自然とダイビングの方へと向かっていく。

「ダイビングライセンスにはいくつか種類があるんですが、入門の オープンウオーター の次に アドバンス というコースでブルーホールとキャニオンで潜るんです。」 ブルーホールとキャニオンという場所は、沈船(というツアーがダハブから出ている)を含めて、ダイバーが考えるベストランキングの ナンバー1から3に入っているらしい。
ちょうど概略図が宿の入り口に貼られているとのことで、マサさんと一緒にそれを見てみる。と、なるほど、これは絶景そうである。
このときまでは、まだ本当にダイビングライセンスを取得する方向に行くとは思っていなかったが、流れはつづくもので、ちょうど今日の午後から1名の日本人 が新規にオープンウオーターのコースを始めるという。

まずは話を聞くだけ、ということで 午後から顔を出すことにする。

その日の午後からコースを始める ヤスさんに出会ったのはその時が初めてだった。
まずは軽く内容の説明を受け、問題の掛かる料金であるが、2名で受講する場合は1人当たり 237US$ と通常より50US$ほど安くなるらしい。
まぁ、実際問題として、受講料はさしたる問題ではない。そのとき既に私の頭ではHPに 「ダハブ DE ダイブ」と書くことを考えていた。その文言はプライスレスではないだろうか。

オープンウオーターライセンスの取得は最短で3日。2回の限定水域講習と4回のダイビング、毎日の講義と確認テスト。そしてインストラクターによる見極め と講習内容のペーパーテストからなる。
潜る深度は最大18メートル。レクリエーションとはいえ、多少のキケンは伴いそうな予感である。

さっそくこの日から参加することになった私は、1時間ほどの講義の後、限定水域での講習が始まる。



この日の朝まで、まさか自分の人生に於いて “ボンベを背負い、レギュレータを口にくわえてダイブする。” とは思っていなかった。メガネの度が結構強いことも 自分に足枷を嵌めていただろう。説明を聞くまで「度の入った水中マスク」があることを知らなかったのだ。
シリアを一緒に旅した画家さんが 最後の日、寄せ書きに「ダハブでダイブ」と洒落を書いてくれたのも一因であろう。両名とも本当にダイビングをするなどとは思っていなかったはずである。旅 とは面白いものだ。


◆ ダハブ DE ダハブ

イスタンブールに長期逗留していた頃、熱中していたゲームがある。
「ダハブゲーム」。 多数の平民の中に混じり入ったキングを捜す というディスカッションゲームである。

人数分+1枚のカードの中に、「キング」が複数枚、それ以外の数字カードが「平民」とされる。自分のカードは自分だけが見ることが出来る。ゲーム開始の前 に全員が目を伏せ、ナレーションに従いキング同士はお互いを確認する。平民サイドとして探偵(通常はスペードのエース)が一枚だけ見たいカードを見た後、 全員が目を開けて ゲーム開始 となる。
一枚余ったカードは封印され、それが「キング」、「平民」、「探偵」の何れであるかは解らない。

全員でのディスカッションを元に「キング」であろうと思われる人のカードの上に投票を行い、一番 票が集まったカードが開けられる。それを複数回繰り返して、最後までキングが残れば「キングチーム」の勝利、そうでなければ平民チームの勝利となる。

簡単に言えば う・そ・つ・き・ゲーム であるが、その時に縁のあった人の名前を覚えたり “ひととなり” を知ることが出来るという  オリエンテーション として有用なのだ。

ダハブゲームが2年ほど前に出来たという地 “ダハブ”、ある種 聖地 と言える場所でダハブゲームをする。これが私において本来のダハブ訪問目的である。

この夜もダハブゲームが繰り広げられるという。
複数の宿に分散して泊まっている日本人旅行者が、毎夜どこかのレストランに集まってゲームに興じているそう だ。私が泊まっているセブンヘブンにも 例のマサさんや 数名の日本人が泊まっており、彼らも常連メンバーである。

そのマサさんに、今夜の開催場所を告げる「使者」がやって来た。が、

・・・・どこかで見た顔である・・・・ と思っていると。

その子は私の顔を見るなり 奇声を発しつつ 後ろに5歩下がっていく。

「きぃゃぁぁぁぁ!!! あたし 今晩行かない!! あたし この人とやりたくないぃぃ!!!!」

ヒドイ再会もあったものである。
が、まぁ、心当たりがないでもない。実際、話を聞いてみて思い出したが、彼女は みゆきさん といい、ダハブゲームを “ 私 ” から習ったらしい。 やたらと長かったイスタンブール滞在。百人前後には伝えたはずである。正直なところ誰に教えたかなんて全員は覚えてないですよ。

で、みゆきさんは イスタンブールに居た際、私から こてんぱんに のされていたらしい。
う〜ん。覚えてないなぁ。というより むしろ毎回のことであるし。
まぁ、さっき「今晩行かない。」と言っていたみゆきさんも 平静を取り戻したのか 参加するようである。

そんな前振りがあり、ダハブでのダハブゲームで「素人を演じつつ、場を混乱させてみよう。」と考えていた私のもくろみは、文字通り 「あっ!」 という間に崩れたのである。

ゲームの前にレストランで食事を取る。
やはり長期でダハブに逗留するメンバーも居るようで、レストラン店員と仲の良い数名が交渉し、メニューにあるプライスは全く関係ないが如く  半額まで値段を下げてくれる。やはりどこに行っても人間関係が全ての基本である。

その後、ダハブゲームでぶいぶい言わせた事は割愛しよう。


◆ ダハブ DE ダイブ 再

3日の予定を全てこなし、最後のペーパーテストが行われる。

ちゃんと勉強した甲斐があり、50点満点中45点で合格。これで晴れて「ダイバー」の免許を取得した。
当初予定していた アドバンス コース は水深30メートルまで潜ることが可能となるが、10メートル地点で耳抜きに難があった私はオープンウオーターまでとすることにした。それでも水深18 メートルまでは潜ることが出来るし、ダイビングのメインである珊瑚礁を見るには十分である。
アドバンスの実習ではブルーホールとキャニオンで潜るのだが、こちらはダイブで行くのを断念することになる。が、シュノーケリングであればなんの問題もな いらしい。
同じく講義をうけていたヤスさんは単独でアドバンスに進み、明後日の実習でブルーホールとキャニオンに行くとのこと、私はこれにシュノーケリングで参加す る約束をして講義から離れた。


◆ 休日の過ごしかた

日中はダイビング。夜は講義の予習と復習。加えてダハブゲームと何気に忙しかったダハブ滞在。

日中の気温は32度、町を歩く人の数はまばらである。陽が沈む午後8時頃から町に活気が出てくる。
湾になっているダハブの町は各所から海に映り込むレストランの照明が 「ここはビーチリゾートだよ。」と自己主張しているようである。

あけて翌日、“そういえば普通に泳いでいない” という盲点を発見し、宿の目の前のビーチから海に飛び込む。

まだ日が高いという時間帯が悪かったのか、泳いだ後の背中は真っ赤に染まっていた。

久しぶりの休日、縁あってこの町の顔役(?)のヘレナさんと午後の時間を共にすることになる。

正午頃から町を散策していた私は、数ある衣料品店でダハブらしいシャツを買おうとしていたのだが、やはりツーリストを相手にしている各店ではシャツ1枚 50EP(約千円)と高い額を設定している。

たまたま、シャツ屋の前でチャイを飲んでいた女性が人なつっこく私に「シャツを買いたいの?」と話しかけてきた。客引きとは明らかに異なる彼女の振るまい に、私は彼女を “ 暇をもてあましている西洋人旅行者 ” と推測したのだが、この予想は外れることになる。

疑いつつもそのシャツ屋と顔見知りらしい彼女の交渉によって値段が半額以下に下がる。クオリティを考えれば現地民向けと相違無い価格が出たことで、この人 は一体何者なのだろう?という心地よい疑問が湧いてきたが、まずは目の前の幸運に感謝しつつ、2枚程 シャツを頂くことにした。この時は 必要以上の枚数を買ってもバッグに入らない為、草臥れたシャツの後任として2枚程度を購入したが、他に彼女がチョイスしてくれた “少し派手目” なシャツを買わなかったことを ダハブを離れた後で少し後悔する。が、それは余談としよう。

話をしているなかで、彼女は元々ブラジルで心理学者をしていたらしいこと、今はダハブで小さな鞄屋を経営していることがわかってくる。この日は休業してい た彼女の店を少し覗かせていただき、その後は少し早い夕食をビールと共に頂く。レストランに向かうまでの間にも彼女と親しい店の人々が声を掛けてくれる。 親しいと表現するのは適切ではないかも知れない。通過する道の両側で営業している全ての店の人々が声をかけてくれ、また 私にローカルプライスならぬ、 ディスカウントプライスで商品を売ってくれることを約束してくれたのだ。

彼女との会食は非常に楽しく、同時に心に響くものであった。
無宗教を自負する彼女であるが、各宗教に造詣が深く、仏教や神道、観念としての輪廻転生も知っていた。自らの人生を自分の魂に於ける最後の回と感 じる中で、出会う人々になにか“道”のようなものを伝えているとのこと。スピリチュアルな雰囲気を感じるのは、彼女が語る彼女のスタンスからなのか、それ とも心理学者としての経験と行為なのかは定かではない。
長く話を続けている間に、夕日が沈んでいく。

恋の町として長期旅行者に知られるこの町で、私のデートのお相手はブラジル出身の不思議な白人女性だった。
もっとも、彼女は私の両親より遙かに年上だったのだが…。





◆ ダハブ DE シュノーケリング

さて、本来であればアドバンスの講習でダイブするはずだったブルーホールだが、水深の深いところは ヤス君にまかせるとして、私はシュノーケリングと洒落込むことにする。講習中はカメラを持ち込む事も不可の為、“写真を撮りたい”希望の私であれば シュノーケリングもベターなチョイスであろう。

ピックアップトラックにヤスさんとインストラクター氏のダイビング機材。私のフィン等を乗せて車は走る。
ダハブ市街から車で15分程で “キャニオン” に到着する。観光客目当てのラクダタクシーが闊歩しているが、西洋人をターゲットにしているのか、東洋人には目もくれない。

ダイビングコースのブリーフィングをするインストラクターとヤスさん。
私もついでに持ってきたウエットスーツを着てみる。が、2人に比べてどうにも画が締まらない。ついでに泳いでいる際もウエットスーツに含まれる気泡が邪魔 をして上手く潜れないのだ。次のブルーホールではウエットスーツは着ない事を心に誓うのである。


(水中カメラ現像待ち)



1時間ほどで2人が海から上がってきた。さて次はブルーホールである。


キャニオンからブルーホールまでは車で5分程。時間はちょうど正午になり、ブルーホールが一望できるレストランで昼食をいただく。

ブルーホールのダイビングは エントランスポイントまですこし距離があるらしく、ヤスさんとインストラクター氏は重い タンクと ウエイトを装備して歩いてい く。
私は海水浴を楽しむ人々に混じり、フィンをつけてブルーホールに飛び込んだ。

(水中カメラ現像待ち)




2人は30分ほどで戻ってきた。話を聞くと水深の深いところでエアーを大量に消費したためさほどの長時間潜行が出来なかったそうである。


シュノーケリングとダイビングが終了した我々は昼食を摂ったレストランでしばしの休憩を取る。そのときインストラクター氏の知り合いが持っていた −?−  ベドウィンが頭に巻くターバンを付けてみる。ヤス君は髭があるため非常に似合っていたのだが、私が付けるとやはり締まらない。困ったものである。



その夜も例によって割安価格のレストランで食事を取り、ダハブゲームに熱中する。


◆ カイロへ

ダハブからカイロまでのバスは最安で80EP、最もお手軽なものは ペンギンホテルから出ている100EPのバスとのこと。他の旅行者からは100EPのバスを勧められた。このバスのメリットは到着がカイロのバスターミナ ルではなく、目的地、つまりはカイロでの宿泊先まで送迎してくれることであるという。一方、自分が泊まっている宿からは90EPで手配が可能だ。
100EPの送迎付きバス。悪くない…。先にカイロへと向かった友人達も100EPをチョイスしている。
だが、 『無難すぎる選択だ。』 というのが私の結論だった。

90EPで泊まった宿からのバスを選択し、バス停へと送ってもらう。


同じ宿に泊まったアキラ君は まだまだダハブで逗留する。彼も100EPのチョイスを勧めてくれたが、私は「カイロのバスターミナルでタクシーと喧嘩してくるさ。」 と 言葉を残し、 一路 カイロ へ向かったのである。




◆オマケの写真館


シュノーケリングの際に用いた水中カメラ(65EP)。
ちなみにエジプト産タバコ クレオパトラは2.5EP。水は1.5EPが相場である。


海沿いのレストランで徘徊するネコ。エジプト産らしくスリムな体型である。


エジプシャンポンド札。たまに「古文書か?」と見間違うほどの年季が入った札に巡り会う。


海沿いに並ぶ看板。「自転車禁止。ラクダ禁止。ウマ禁止。」

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