トラブゾンへ to Trabzon



3月10日の夜。私が泊まっていた宿に エルズルムから1人の日本人が来た。深夜特急ではイランのテヘランからトルコのエルズルムへとダイレクトバスで主人公は走っていた。私は途中、タブリーズ とここドウバヤズットに立ち寄ってはいるが、やはり目的とする場所はエルズルム。
その彼に、この3月のエルズルムはどういった環境なのかを尋ねてみる。彼の回答は的確な言葉だった。「エルズルムはドウバヤズットより寒いです。ここは幸 せですね。少なくともエルズルムの様に銀世界ではないですから。あ、あれですよ、昨日のエルズルムの気温ですけど 最高が2度 で 最低が −12度でしたよ。」


その言葉は私のエルズルム行きを止めるに十二分の効果を持っていた。
ここドウバヤズットでさえ、私には極寒の地なのだ。もちろん気温だけではなく、標高の高さからほんのりと軽い高山病らしき症状があるのだ。ここより高い位 置に上がるのは少々つらそうだ。
どのみち、エルズルムを割愛するとしても、その次の目的地はトラブゾン。エルズルムの町を通過する路線である。


翌朝の8時30分。ドウバヤズットのオトガルに立つ私と豊田君の2名の姿があった。彼とは行き先が異なるのだが、途中、ドウバヤズットから百キロ程度離れ た町 AGRIまでは同じバスとなる。


車中から雪山を眺めていると、季節が春へと移り変わっている様子が見て取れる。
そんな写真を撮っている私を知ってか知らずか、車内ではトルコ人たちからの「俺を撮れ!」要請が激しく行われていた。


途中に立ち寄ったガソリンスタンド。表示を見てやはり驚く。以前から人に聞いては居たが、1リットルあたり約200円という価格。平均所得水準を考える と、日本なら1リットル1200円という感覚になる。
イランではどんな安宿でも室内に温水ヒーターの暖房とふんだんなシャワー給湯があったものが、ドウバヤズットに入ってからは 薪に依る暖房と、申し訳程度な小ぶりの電気湯沸かし器となった理由が見て取れる。

給油休憩でも相変わらずトルコ人から「写真を撮ってくれ」要請を受ける。並んでいる4名はバスの運転手と乗務員達なのだが、仕事より写真が優先するらし い。


またしばらく溶けかかった雪を車窓に流しながらバスは走る。


ドウバヤズットを出発して約2時間。私がバスを乗り継ぐターミナル、AGRIに到着する。

タブリーズで出会った豊田君はここからトルコ中部方向へ、私は北西・黒海沿岸の町 トラブゾンへと別れていく。
ドウバヤズットで既にトラブゾンまでのバス代35YTLを支払っている私は、ターミナル内のカウンターで予約票から乗車券へと切り替える。そんな作業をし ているうちに、豊田君を乗せたバスはすでに出発していた。
ここまでのバスを降りるときに彼には軽く別れの挨拶をしていたが、カウンターから外に出て、そのバスがすでにいないというのも少し寂しいものだ。


それから30分の後、AGRIからトラブゾン行きのバスは11時に出発した。
道は少しずつ風景を変えていく。気がつくとすっかり山肌をあらわす山道となり、時間と共に雪景色が強くなっていく。時々耳に感じる違和感が気圧の変化を知 らせていた。
ドウバヤズットで体調が落ちていたのだろう、少し風邪気味だったこともあるが、鼻と耳を繋ぐ気道がふさがっているのだ。あくびをする毎に耳の奥で鳴る「バ リッ」という音は、ここの気圧が低いことを証明している。




◆昼食

AGRIを出発してから2時間と30分。午後1時30分にバスがガソリンスタンドに併設されたレストランに停車する。
停車したバスを降りた瞬間、自分が着ているブルゾンがまったく役に立っていない事を思い知る。

すこし遅めの昼食、牛肉とポテトのトマト煮込み(5YTL)とライス(2YTL)をいただく。従業員と話しをしていると、どうやらここはエルズルムの 35Km手前にあたるらしい。


レストランを出てからの残り35Kmの風景はまさに銀世界としか形容の仕方が見あたらないものとなる。時たま空を舞う雪は上から降ってくるものではなく、 地面から巻き上がって空中に漂うものだ。
自慢ではないが、私は日本の本州最南端の県の出身である。生まれてこのかたスキーなど1度しか したことがないのだ。とてもではないがエルズルムの滞在は 自分には無理そうである。


午後2時30分頃、バスはエルズルムのオトガルに到着する。バスが停まる部分こそ雪が始末されているが、その周辺には白い絨毯の如く雪原が広がっている。



オトガルを出発して以降、私は少し寝入っていたらしい。気がつくと時間は午後5時30分。

既に銀世界は消え、山を下っていた事に気づかされる。いつのまにか太陽も山肌に眠り、街灯と時たま見せる民家の明かりを眺めていた。


午後7時。バスはトラブゾンのオトガルに到着する。ここから市街まではセルヴィスと呼ばれる無料送迎のバンで移動となる。


ものの5分程で市内の公園に到着する。ここからは徒歩で宿を探すことになるが、既に時間も遅い。
数軒の宿を内見し、ある宿に投宿を決めたのは午後10時を廻ってからのことだった。




◆オマケの写真館


トルコ国内のバスでは、紅茶やコーヒーが振る舞われる。「ネスカフェ または チャイ 」という言葉に ネスカフェをお願いするが、おそらくトルコブランドらしいULKER社製が出てくる。


レストランでも「写真を撮って」攻勢。なにげに自分の格好いいポーズをよく知っている。

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