トルコ国境へ to Turkey

◆イラン最後の「ブチ切れ」 と 「もてなし」

タブリーズからトルコ国境へと向かうバスは、タブリーズのオトガルを朝8時に出発する予定であるらしい。

宿からバスターミナルまではバスで20分程の距離、とはいえ、何時に始発のバスがあるかは不明なままなので、7時頃に市内のバス停に向かう予定で、6時に 起床する。パッキングも思いのほかすぐに終了し、そのまま宿をチェックアウト。午前6時30分にはバス停に到着した。

3月初旬、高地の早朝はまだまだ気温も低く、バス停付近ではたき火が焚かれ、暖かいチャイグラスを傾けるイラン人を少なからず目にする。

箒とチリトリで道路掃除をする人や通行人へ バスターミナルへ向かう市バスの乗り場を尋ね、冷えたベンチに腰を下ろすがどうにも落ち着かない。 聞く人ごとに 教えてくれる乗り場が異なるため、『果たしてこのベンチに座っていて良いものだろうか?』と考えてしまうのだ。

5分程座っていただろうか、少し大きめなカバンを持った壮年イラン人が通りがかる。彼を呼び止め、「バスターミナルはこの乗り場で良いのだろうか?」と尋 ねるが、彼は私が “バスターミナルに行きたい” とのみ理解したらしい。

ちょうどタクシーを拾うらしい彼に便乗し、バスターミナルへと向かう。

事前情報では 市内からバスターミナルまでは タクシーで2000Rials。宿でバスの無料券を頂いていたが、約20円程度の出費なら大した額ではない。そう考えていたが、私が便乗したこのタクシー では5000Rialsと言われてしまう。最初は『少しボラれてるのかな?』と疑ったが、同乗の彼は2人分 あわせて1万Rialsをドライバーに渡して いる。おそらくは早朝の為、すこし割高になるのだろうか。

午前7時、タクシーはバスターミナルに到着した。その足でチケットカウンターに向かい、国境の町 マークー までのチケットを11,000Rialsで購入する。

数日前、タブリーズに到着したときに見かけて気になっていた ホットミルク、サンドイッチを朝食としていただく。

8時ちょうど、バスに乗り込もうとしたところで、同じバスの荷台にバックパックを預けようとしていた1人の日本人青年 豊田君 と出会う。

彼は、この朝にこのタブリーズバスターミナルに到着し、そのままトルコ国境を目指すのだという。
チケットカウンターで切符を買ったわけではなく、前のバスを降りてそのままこのバスに乗り込もうとしていたのだ。たしかにチケットは車内で買うことが出来 るが、あと数席で満員のバスに飛び乗れた彼はラッキーであると同時に そのたくましさが少しうらやましくもある。

車内に紛れ込んだ2人の日本人が珍しいのか、我々2人は同乗客の感心を釘付けにしている。特筆すべきは1つ前の席に座るイラン人は多大な興味を私たちに向 け、彼が降りるまでたっぷり3時間は、言葉も通じないながらに必死にコミュニケーションを図ろうとする姿に振り回されることになる。


 
イラン最西部の山間地帯を抜けてバスは走る。

タブリーズからマークーまで、4時間と少し時計が進んだところで到着する。
バスは市街地から少し距離のあるバス停に着いた。

事前にタブリーズの宿で聞いた情報では、ここから国境まではタクシーで40分程、2000Rialsのはずである。
バスを降りたところで 客待ちをしているタクシードライバーに取り囲まれる。いけ好かない顔の連中であるが、ものは試しに値段を聞いてみると 2万Rialsという。また、こちらの言い値2000Rials をバカにしてくる。
お話にならないので さっさと別のタクシーを拾うため歩き出そうとするが、豊田君は まだ悪徳タクシーに囲まれている。 「こりゃイカン。」と取り囲んでいる悪徳タクシーを掻き分けるが、敵もこっち(彼?)をいいカモだと思っているのか、彼にしつこく食い下がっている。

そこで5分ほどつまらないやりとりをくりかえしただろうか。“悪徳タクシー” と “相手にしても仕方がない連中に まだ愛想を振りまいている彼” の2つにストレスが溜まり、遂に私は 例によって キレ た。
多少なりとも英語が通じる彼らであるので、「ケツを蹴り上げるぞ!」 とか言ったような気がする。 もちろんいきなりそんな言葉を言うわけではなく、鼻先3cmでのガンのとばしあいがあるわけだ。

そんな私を評して 悪徳タクシーは 豊田君に「こいつはクレイジーだから気をつけろ!」と伝えている。オイオイ。市価の10倍の料金を請求し続けて、顔がおかしくなってるお前らが 言うなよ。
まぁ、確かに脳内が沸騰している私もまだ若いのだが。

最終的に諦めた悪徳タクシーを離れ、20m程歩いたところで、普通のタクシーを捕まえる。こっちはやはり2000Rialsで走ってくれるようだ。

マークーから国境まではタクシーで40分程度。標高が上がっていくため風景に雪山が多くなっていく。
話の流れで国境を一緒に越えることになった 豊田君であるが、タクシー車内において、ココロの距離を感じさせるようになった。もしかすると “ なんだか、ヤバイ人と一緒にいるのかも知れない” とか考えているのだろうか。まぁ、2万Rialsと2千Rials。日本円で言うなら200円と20円の端数であれだけキレて喧嘩しているのだ。そう思わ れても致し方なかろう。
結果、彼が再び私の目を見て話しをしてくれるようになるまで しばらく時間が掛かる事になる。


国境ゲートに到着したのは午後1時を少し廻った頃。昼ご飯として最後のイラン料理(ケバブ 2万Rials)を食す。
食べ終わったところでレストランを出ると、なんと 雪が降っている。しかもシャーベット状になっている奴で、何気にこれは寒い! そんな中、手持ちのRials札をトルコリラ に両替しようとレートを聞いて廻る。大体 660〜670になるようだ。

両替も済ませ、国境ゲートへと歩を進める。
ゲートから国境自体までは約2Kmほどあり、中を巡回しているセダンで移動できるらしい。我々2人がゲートに入る直前にそのセダンが出発したらしく、10 分ほど待ちになるようだ。
雪を避けるため、検問所の軒先を貸していただこうとすると、「中に暖房があるよ」と快く招いてくれる。


国境内は基本的に写真撮影がNGである。そのため、頂いたチャイのグラスだけ撮ってみる。イランで様々な人々に会って来たが、基本的には良い思い出が多い 中、暖かいチャイで締めくくれたこともまた 最後の暖かいもてなしとなる。 暖炉で暖まりながらチャイを飲み干したところで、セダンが到着した。

 
イランを出国して、トルコ側国境でスタンプを頂く。ここは写真を撮ってもいいらしい。
トルコ入国を果たしたのは午後3時30分頃であった。


国境オフィスから ゲートまで走るというタクシー(ドルムシュ)に乗り込む。料金は1YTL(約90円)。大した距離ではないだろうが、掛かる料金の違いはやはり大きい。
そして、到着した国境ゲート。。。。えっ? 500mも走ってないじゃん。
このドルムシュには無理して乗らなくても良かったかも知れない。。。

さて、国境ゲートの前では、トルコ側国境の町 ドウバヤズット へと向かうドルムシュが客を手ぐすね引いて待っている。同じタイミングで国境を通過した1名のトルコ人と共にドルムシュ料金の交渉を始める。幸運なことに 彼は少し英語が喋れたのだ。

最初は1人 10トルコリラ(YTL)と言っていた料金も 彼の交渉によって3人10YTL、1人 3YTLと料金が下がる。どうやらこのあたりが限界らしい。それでも トルコ人の彼は「それでもOKか?」と聞いていたので まだ少し高い可能性があるのだろう。

ノアの箱船が漂着したといわれる アララト山 を横目に見ながら ドルムシュは走る。


国境から30分程。自分の時計で午後4時30分、トルコ時間で 午後3時 にドウバヤズットの町に到着した。



◆オマケの写真館


タブリーズのバスターミナルにある 売店。

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