テヘラン Tehran

◆テヘランへと向かう。

エスファハーンで宿泊したTous Hotelの正面あたりからバスターミナルに向かう為、乗り合いタクシーを捕まえようと頑張るが、目の前で停まってくれるのは乗り合いでは無いタクシーば かり…。こいつらは50%の確率で倍額を言ってくるので無視を決め込む。
が、乗り合いが捕まらずに途方に暮れている私。それに気づいた1人のイラン人青年Amid氏(25才)がそれとなく「僕も同じ方向だから。」と乗り合いタ クシーを拾ってくれた。彼はさほど英語が得意でないものの、こちらも人のことを言えた身分では無い訳だ。2人して日本の中学2年生レベルの英語で話を盛り 上がる中、20分程でタクシーはエスファハーンの北バスターミナルに到着した。のだが、ここでAmid氏がタクシー代を払ってしまった。額にして 2000Rials(約26円)。
人の好意に甘えたままでは何ともお尻の据わりが良くない。且つ、私の推測だが、Amid氏はもともと行き先が違ったような気がするのだ。 すぐ横の商店で7UPモドキ(2500Rials)を2本買い、1本をAmid氏への返礼としたのである。(※ 「バスターミナルから何処かへいくの?」と聞いたのだが、「家がこの付近なのさ。」と返答するまでやたら考え込んでいたので、なんとなくそんな気がした。 まぁ、彼にしても英語の勉強になっていた可能性があるので、気にすることではないかもしれないが。)

が、なんと言おうか、旅は道連れ世は情け。こうなるとバスチケットを手配するまで面倒を見てしまうことになるAmid氏。結局、バスが発車するまでの1時 間半、彼と世間話に興じたのである。(主にイランの自動車産業の話だったなぁ。)
バスは夜9時発、19500Rials。テヘランまでは6時間ちょっとなので、もう少し遅いバスを選ぼうとしていたのだが、話の流れ上、ちょっと早すぎる バ スと相成った。


◆テヘラン?についた。

すっかり寝入ってしまったバスの車中。気がつくと終点らしくバスの運転手に「終点だよ〜。」とたたき起こされる。時間を見ると午前4時。ちょっとバスが遅 れたようだ。

あたりは真っ暗なので明るくなるまで暖房の効いた待合室で時間を潰すことにする。現在地もよく判らない状態は非常にマズイので、何処のバスターミナルに着 いたかを聞こうとするも、周りのイラン人の英語は全滅である。
(ちなみにテヘランには東西南北・4つのバスターミナルがあるのだ。)
自分の怪しいペルシャ語で「ここはどこ?」と聞くも「ターミナル・カラジェ」と意味不明な文言が帰ってくるばかり。

とりあえず用を足したかったので、「ダストシューイ、コジャー?(トイレどこ?)」と聞くと、「あっちのデカイ建物の方だ。」と言う。『なるへそ、ここは ターミナル本体では無かったのだ。そういえばチケット売り場も無いもんなぁ。』と理解できる。そして、向かったターミナルで愕然とする事実が判明するので ある。

ターミナル内にはバスのチケットカウンターがあり、ラッキーなことに早朝にも関わらず片言の英語を喋るオジさんが受付にいた。で、「ここはどこなの?」と 聞くと…。
「ここはカラジェという名前の町のバスターミナルで、テヘランまでは…そうだなぁ。35Kmぐらいかなぁ。」

…。

「35きろぉ?!」
35Kmといえば、東京駅に着く予定で乗ったバスが、幕張に着いたようなものである。あぁ…。眩暈がしてきた。
イヤな予感はあったのだ。今朝の3時頃、バスのドライバーが「アーザーディー」と言っていたような気がしたのだ。確証は無かったが、アーザーディーとはテ ヘランにある西バスターミナルの別称である。そのときはほとんど見事に寝入っていたし、何よりも『乗っているバスはテヘラン行きだから、大丈夫。』とタカ をくくっていた自分が居たのだ。
過ぎたことは悔やんでもしょうがない。テヘランに戻る方法を聞かなくては。
受付のオジさんに聞くと、「タクシーなら2万Rials(約260円)だね。」と言う。エスファハーンからのバス代とほぼ同じだが、まぁ、理解出来ない額 ではない。とりあえず夜が明けるのを待つことにする。

2時間ほどボケ倒しつつ、売店でチャイ(というか紅茶。しかもアーマッドのティーバッグ)を2000Rials(約26円)で頂く。暖まるなぁ。
とかやってると太陽が昇ってきたので、タクシーを捕まえることにする。

バス停の敷地から外に出ると、目の前は高速道路だった…。
車道の方向が反対らしく、歩道橋を渡って反対車線に行く。と、客待ちしているタクシーが5台ほど止まって居るではないか。コレ幸いと早速話を聞いてみる。
「てぇへらぁんだぁ?… あ〜。8万Rials。」
うわっちゃぁ!出たよ。世界各国共通のボッタクリタクシー。お前らマジでむかつく。5台ともである。ツーリスト相手に闇カルテルやってんじゃねぇ。こちと ら最初は愛想良くニコニコしたが、後半は無視である。こいつら後半がしつこいのだ。しかも値段を下げずにである。

タイミング良く、50メートルほど離れたところにバスが停まったので、テヘランに行くかどうか訪ねてみることにする。幸運な事にテヘランへ行くらしい。ド ライバーに「チャンデ?(いくら?)」と聞くが、なんと返答しているのかまるで分からないでいると、乗客の一人が通訳してくれた。「無料でいいよ。だって 君はイランに来てくれたゲストじゃないか。」って。なんて心暖まる国なんでしょう。ここは。

通訳してくれた乗客が5分ほどで、降車した後、カラジェからテヘランへと向かうちょうど1時間の乗車中、私は再度 爆睡したのである。


◆テヘラン観光

テヘランの西バスターミナル、別名アーザーディー・ターミナルにバスが着いたのは時計が7時40分を指している頃だった。
イラン人は心から人がよいと思う。無料で乗せて頂いたバスから降りてすぐ、英語が出来ない別の乗客の1人が「乗り合いタクシーはこっちだから付いてきなさ い。」と手招きしてくれるのだ。
とは言え、ターミナルからアーザーディー塔を発見した私は、「アーザーディー塔を見てきます。本当にありがとう。」と礼を言い、彼と別れたのである。

近くに見えたが意外と遠かった、アーザーディー・タワー。
バスターミナルから徒歩15分程かかっただろうか。距離と言うよりも、横断歩道の無い6車線道路(しかもランナバウト)を横断するのに時間がかかったの だ。
アーザーディー・タワーはイラン建国2500年を記念して建てたれた塔と言うことで、テヘラン最大の観光名所なのである。と同時に、私にとっては『テヘラ ン観光はこれだけでOKだな。』と予定していた事もあり、文字通り“テヘラン到着30分で観光終了!”と相成った。

(ホントは他にもいくつかあるのだが、全て写真が撮れないので、web的には意味がない。)


◆市内へ。

アーザーディー・タワーのすぐ横に「乗り合いタクシー乗り場」があり、地元民が列を作ってタクシーの到着を待っている。私もその中に混じり、市内のど真ん 中にある“エマーム・ホメイニー広場”までのシェア仲間に入れていただく。1人あたり5000Rialsで約40分。

で、宿にチェックインしたのは午前10時を回った頃だった。
例によって複数の宿を見比べてからチェックインをしようと考えていたのだが、今回は1発目の宿に決まった。設備が良かったからでは無く、内見をしている際 に、背後から私を呼ぶ声が聞こえたのだ。
振り返ってみると、以前に、デリー、クエッタ、シーラーズで出会った横断組の1人である。彼が泊まっているなら私も泊まらない理由は無いだろうということ で即決したのである。


ま、つっても宿の周りは自動車の修理工場やら部品屋が密集しているエリアなので、ツーリスト向けにはあまり便利ではない。


◆ 食事とか。

便利では無い宿の周りにあって、数軒の有用な店がある。ちなみに全て食べ物系。

@名前が読めないレストラン。
 
 

レストランの名前が読めないだけでなく、注文にも英語が使えないレストラン。バット・しかし、メニューのアラビア語には一応、日本語と英語が併記されてい るので注文はスムーズに行く。
中段左:牛肉ケバブ+ライス(15000Rials、約195円)、サラダ(3000Rials)、コーラ(1000Rials)
中段中:鶏肉ケバブ+ライス(28000Rials、約364円)、サラダ(3000Rials)、コーラ(1000Rials)
中段右:鱒フライ+ライス(25000Rials、約325円)、サラダ(3000Rials)、コーラ(1000Rials)

インド・パキスタンを越えてイランに入ったときに感動したのは『サラダが食べられる。』ことだった。
また、写真に写っている「のりたま」は、8ヶ月間に渡る旅の道中、ずっとバックパックに入れていたもので、テヘラン到着を祝して開封したのである。
この時はたまたま自分を含めて5人の日本人と卓を囲んだが、「現在、イランに日本人バックパッカーは最大でも30人も居ないのではないか?」というちょい と不安な話が上がっていた。

Aシュークリーム

イラン名物、ウマいシュークリーム。3つで2500Rials。箱に入っているのは合計で12000Rialsの洋菓子。おもしろいのは、イランでも 「シュークリーム」という名前だったこと。英語ではクリーム・パフのはずなのだが、最初は店員さんと全く通じず、向こうから「ああ、シュークリームね。」 と軽く流 された時の逆カルチャーショックは大変に楽しいモノだった。

B魚屋さん

生魚を買った訳ではないのですが、あまりに日本の魚屋さんと似ているので、写真を一枚撮らせていただきました。イラン人に「写真撮って良いですか?」と聞 いたあとのリアクションで面白いのは、仕事にいそしんでいるポーズを取る率が非常に高い事である。先のレストランでも、ナゼか急にトマトを串に刺し始めた のだ。なんて愛くるしい国なんでしょう。イラン。

Cサンドイッチ

テヘランの観光名所である、“旧アメリカ大使館”。その前には「Down with USA (アメリカをぶっ潰せ!)」という標語が掲げられており、ヤバ過ぎて撮影禁止。
地下鉄、タレンガニ駅(エマーム・ホメイニー広場から750Rials)を下車して、地上に上がったその瞬間。いきなり標語が目の前に躍り出た。つーか現 れるの早すぎ。5分ぐらい探させてくれ。
で、やることが無くなった日本人3人組でメシでも食うかと適当に入ったサンドイッチ屋。イランで初めて食べた「ソーセージ入りのサンドイッチ (15000Rials)」 どうにもソーセージがデカすぎる。

話は変わるのだが、まさかイランの地下鉄がこれほどキレイとは。。写真ではプラットホームのみしか撮れていないが、電車自体も真新しくピカピカであった。 加えてホームの光量が高い。さすがはオイルが売るほどある国なのだと感心する。


◆テヘランを去りゆく私。

そういえばエマーム・ホメイニー広場の写真を撮ってなかったと思い、夜ではあったが、とりあえず撮ってみる。

写真右は、公園の横の角で乗り合いタクシーを拾おうとする地元民。徐行するタクシーの窓から自分の行き先を告げ、方向が一致するならタクシーが10メート ルほど向こうに停まる、という運用。

2泊したテヘランであるが、この日は昼から小雨が降っていて、私は陰鬱とした気分だった。こんな気分でテヘランを離れられない。いや、むしろ移動するとい う行為そのものが面倒くさく感じてしまう。こんな気分はラホール以来だ。テヘランで延泊したとして、何かする事があるわけではない。
インターネット屋にしても程よく遠い距離にあり、何かをするために歩く距離が気怠いのである。

そんな気分から私を救ってくれたのは、その日に同じ宿にチェックインした1人の日本人旅行者だった。
彼とは、以前にデリーの日本大使館で会っていて、ペースの速い彼の旅から、もはや再度会うことは無いだろうと思っていた青年だったのだ。
一人では陰鬱となりやすいが、誰かを前にすると『頑張らねば』と奮起しやすくなることは自明の理である。ましてやデリーで3日ほど一緒に過ごした人物を目 の前にして、弱音など吐いている場合ではない。
時計は午後6時を指している。旅立とう。小雨が再度 私をテヘランに留めようと試みているがかまってはいられない。
青年に別れを告げ、私はバッグを背負ったのである。

一旦、精神が上向くと物事は良い方向に流れ始める。エマーム・ホメイニー広場の横で拾った流しの乗り合いタクシーのドライバーとの出会いが良い例だ。
彼は日本で2年ほど、出稼ぎに来ていた経歴の持ち主であり、片言の日本語と英語を操る。そしてまた話が面白いのだ。「日本で溶接工をしていたときは月収 30万だったけど、今は5万円。私カワイソウネ。ウォッホ。」からはじまって、「日本はイイネー。アルコール飲めるし。パチンコも大好きよ。2年で200 万円ほどパチン コで負けたネー。」 そして果てには「六本木・八王子サイコー、ディスコでダンス、イイネー」である。
そんなバカ話に夢中になっているとあっという間に1時間が過ぎ、渋滞を抜けたタクシーがバスターミナルに到着した。運ちゃんから「タクシー代はいらな い。」と突っぱねられたが、「じゃ、運ちゃんにはあげない。運ちゃんの奥さんにあげる。」とにこやかに渡す私は、完全に旅を楽しめていた。


◆バスターミナルにて

イラン−トルコ国境に程近い町、タブリーズを目指す私はチケットを買い求めようと、数十はあるカウンターでバスの値段を聞いて回っていたが、そのとき、1 つの看板が目に飛び込んできた。

「イスタンブール行き」のチケットを扱っているのだ。

噂には聞いていたが、看板を目の前にした私は少しの動揺を覚えた。もし、私の旅をアジア横断で終わらせるなら、ゴールは目の前にある。
時間が合わない事も知っている。イスタンブール行きは毎日午後2時発なのだ。現在、午後8時。とても乗れる時間ではない。それに乗車40数時間というハー ドな道程でもある。

ただ、「ISTANBUL」という文字が私に何かを伝えようとしているのだ。


私は結局、タブリーズ行きのチケットを購入した。10時の発車までにたっぷり1時間はある。
ターミナルを行き交う人を見つめる自分の心は、自分でも驚くほどゆったりとした気持ちに包まれていた。

旅を始めてから8ヶ月、様々な国を彷徨ってきた。

私は今、イランにいる…

ターミナルの外側では雨が降り続いていた…。




◆オマケの写真館



アーザーディー・タワーの背後に聳(そび)える、ダマバンド山。5671メートル。スモッグで少し見づらい。と、タワーの西側に広がる高層住宅街。人口7 百万人の歴(れっき)とした大都市である。


タイランドで購入したBataのスニーカーとお別れ。半年間はき続け、歩き続けたスニーカー。
左はメイド・イン・イランな小洒落た靴。ドル払いで29。約 3400円。これからよろしく。


粋な形のエナジー・ドリンク、BOMBA。2万Rials。約260円。って誰が買うんだ?そんな高いドリンク。
(日本的仮想価格だと1000円〜1500円ぐらい)


レストランで見かけたオレンジ。というか、木箱がかわいい。


バスターミナルに表示されている、国際バスの行き先名。
イスタンブール(トルコ)、アンカラ(トルコ首都)、アンタリヤ(トルコ)、バクー(アゼルバイジャン)、パキスタン、シリア、そしてアルメニスタン(っ てどこ?※きっとアルメニア、たぶん…。)。

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