ヴァラナシ Varanasi  (日本語読み:ベナレス)

◆着いた。

目的の宿はガンガー沿いに5分ほど歩いたところにある。聖なる川ガンガー。それを目の当たりにしたとき、私は『来ちゃったなぁ…』という言葉を頭の中で何 度も何度も繰り返していた。





◆町の風景。

川沿いに林立する建物の間を縫うように小道が広がっている。道幅は1メートル程度だろうか。人、牛、犬、自転車、バイクがひっきりなしに行き交う、とても 刺激的なエリアである。(単に歩きづらいとも言う)

私が泊まった宿は新館と旧館に別れており、右写真のウシはその間の小道をテリトリーにしている。宿の食事は旧館で出されるのだが、新館に泊まっている私は 1日数回はこのウシと必ず出会う。そして道には彼からのお土産ボムが散乱していたりする。

河沿いのレストランでお昼を取っている時、河原を歩くウシを見た。いや、別にそれは珍しくないのだが。なんとなく目でウシを追っていると、彼がドツボる瞬 間を見てしまったのだから縁が深い。排水が川に流れ込む部位は、さすがに彼の体重を支えられないのだ。

4つ足ともどっぷり浸かり込んでしまったところで、インド人達が救出に向かう。十数人で取り囲んで引っ張り上げようとしていたり、どっかから木材を持って きて、テコの原理で揚げようとしていたが、ハナから階級が違う。10分程でサジを投げたインド人は最後に赤い布を彼に掛けて去っていった。(と、いうか後 ろ側でやってる洗濯仕事に戻った。)


なにやら服を着たヤギ。

映画の撮影をやってるようにも見える。もしかすると新年祭の準備かも?といったところ。

その隣では、例によってヘビ使いの兄さんが笛を吹いている。


宿の屋上でくつろいでいるサルども。最初は向かいの建物屋上で団欒していたのだが、そこのインド人に棒を振り回されたり、石を投げられたりしてこっちの屋 上に避難してきた。

5メートルまで近づくと、そこからは彼のエリアなのか、威嚇されてビビる目に遭う。

ガヴァリアー交差点からガンガーに続くアーケード。

小道とは違い、多少歩きやすいが、今度はリクシャー(自転車の後ろに2人席を設けているヤツ)がジャンジャカ走っているので、結局大した違いはない。


◆さて、本題ですが。


やはりガンガー、泳がないことには始まらない。ただ、一口に泳ぐとは言っても下ごしらえはいろいろ難しい。
そういえば、昔にこんな事があった。

もう20年も前になるが、中学校の遠足で11月の海に行ったことがある。この日は秋らしくない好天で海水温も高く、非常に「イケる!」状態だったが、 150人中の1人が勝手に飛び込んだのでは単なる社会不適応者である。その烙印を押されないために、マズは【先生の許可】を頂かなくては。と、引率の先生 をみると、横にタオルを置いている。こいつはラッキーだ。よっしゃ、交渉開始のゴングを鳴らせ!

クソガキ「先生〜。今日は天気がめっちゃエエね〜。」
被害者A「おお、アホみたいに暑いな。」
クソガキ「なんで暑いのに、タオルもってんのぉ?」
被害者A「ほれ、先生は汗っかきやろ、だからいつも2枚持ち歩いとんねん。」
クソガキ「たしかに、今日は暑いなぁ。アハハ♪。泳ぎたなりますなぁ。あっははっ♪」
被害者A「おお、泳いでこい、泳いでこい。がっはっは!」
クソガキ「ほーい。“仮に”泳ぐとして、タオル貸してもらってもええですか〜♪」
被害者A「おお、持ってけ、持ってけ。」

関西系の掛け合いをやると、大体こういうことになる。先生の顔は「アホ抜かせ、11月の海に泳ぐ馬鹿がどこの世界に居る。」という常識に束縛されているよ う だったが、「泳ぎたなりますなぁ」の呼び水には「泳いでこい」で返すしかないものだ。

「ざっぱ〜ん!!」
2分後に鳴り響いた突入音は、穏やかな海岸で手持ちのお弁当をほのぼの食べる同級生達と、教育に熱い情熱を注ぎつづける先生達の心の水面に大きな波紋を広 げたのである。


…って、綺麗にまとめてる場合じゃない。要は「準備をちゃんとしとこう」って話な訳です が。※上の場合は「根回し」。

それにしても、ガンガー、、、コワイよぅ。。。。大腸菌がウヨウヨいるよぉ。エキノコッカスとか、正体不明な連中も一杯いそうだよぉ・・・。でもなぁ、 ヴァラナシに来ちゃったしなぁ。やっぱなぁ、、、、またこの町に来ることはないよなぁ、、、、、よし、「泳ぎに逝こう!」


まず、大腸菌に関しては、「基本、どこの川にも居るが、ガンガーはその量の多さが問題」なのだ。しかし、地元の川でも、「今年は、大腸菌が多いので遊泳禁 止」と言われていても、気にせず泳いだ様な気がする。友達と数人で行ったが、誰も体調は崩さなかったような…記憶があるようなないような。ま、川から上 がったら念入りにシャワーを浴 びる としよう。
よし、大腸菌の問題はクリア。



エキノコッカスなどの寄生虫も、経口感染がメインなので、「目・鼻・口」は水に浸けない。これ重要。
海パンないけど、地元民は普通にブリーフで入水してるから、「捨てる予定のパンツ」で行こう。つーか、連中はガンガーの水で歯を磨いてるもんな。つええ よ。
タオルは…、いらねーや。そもそも宿が川沿いだし。
サンダル。シャワーついでに洗えばいいな。


そして迎えた新年。

晴れやかな元旦の朝、、、、、、ぢゃない。なんだこの濃霧!?気温も恐ろしく低いじゃないか?




11時頃にやっと霧が晴れてきたが、気温はまだまだ低い。しかも停電。なにげに停電が一番の問題のタネなのだ。宿のホットシャワーは電気湯沸かしになって いて、停電すると自動的に水シャワーになってしまう。むぅ。
ぶっちゃけ、濃霧の段階で本日のやる気100%ダウンなので、翌日を待つことにする。

(ノラ山羊)

明けて翌日、1月2日の天気は晴れ。「よっしゃ!」と思っていたら、いきなり停電。つーか、まだ9時30分。。。  結局、この日は18時45分まで電力供給が停止していたので、またもや見送りと相成る。

(ノラ牛&犬)

さぁ3度目の正直。1月3日。晴れ。11時に停電するも14時50分頃に回復。再度の停電が起こらない事を超祈りつつ、カメラ担当他とともにいざ進軍! つっても玄関出て、横の階段下るとガンガーなんだが。

ガンガーまであと50cmの所でTシャツと半パンを預け、パンツ一丁になったところで、後ろから黄色い歓声が聞こえてきた。振り返って上を見上げると隣の ゲストハウスの屋上からエールを送られているようだ。とりあえず、こっちも手を振り返す。多分、韓国人だと思うが、ノリが良いなぁ。
なんて、感心してる場合じゃない。小生のたわわな乳房と立派な腹をタダ見させる訳にはイカン。(いや、単に恥ずかしいのだ。) とっとと入水しないと精神的に非常にマズイ状況だ。

まずはガンガーに片足を浸けてみる。
確かに冷たい。が、思っていた程ではない。この水温なら、小学生のころの曇天(どんてん)下でのプールの授業より遙かにやりやすい。これはイケるか? (思考時間 0.2秒)
で、両足入れてみて、体を慣らす為に数秒待つわけだが、この体勢で3回ほどクルクル回ってたインド人が居たのを思い出し、とりあえず、小生も回ってみた。

おお、そこはかとくガンガーに祈りが届いているような気になってくる。

よっしゃ、間違いなくイケる。つーか、もはや後には引けん。当初からの選択肢にあり、またこの時までその可能性が残されていた「太ももまでにしよう」とい う案はこの時にあっさりと廃案となった。胴まで一気に逝ったのである。

う〜ん。ガンガーに抱(いだ)かれる私。ちょっと上の方からインド人が話しかけてきたり。


顔を浸けないように泳ぐとすると、犬かき・平泳ぎ・変な背泳くらいしか選択肢がない。どれもカッチョ悪いが背に腹はかえられない。が、しかし疲れる。。う 〜ん、間違いなく運動不足だ。

で、一旦、陸にあがって休憩することにする。ちょっとシュールな写真が出来たりして。


休憩していると、少し妙な日本語で「日本人ですかぁ?」と綺麗なお嬢さん達が聞いてきた。どうやらコリアンらしい。「そっすよ」と答えると、「すごいです ね〜。」と言ってくれるが、こちとらドブ川に入ってみただけのことである。魅力的なオナカを出したまま話すのもなんなので、同じ宿の連中を話し相手に差し 出し、再 度、川に入っていく。


う、2回目の入水は、思った以上に「ちゅべたい!」。 そうか!体が冷えてるんだ!
後ろに気を遣ると、陸ではカメラ担当他とさっきの美人コリアン達が、日本語・英語・韓国語を乱れ飛ばして談笑している。実に「たのしそうだなぁ。」
ま、いいや、孤高の人っぽくガンガーで泳いでよっと。(なぜか不思議なことに、このへんの写真がない)

しばらく泳いで陸に帰り、また休憩していると、カメラ担当様から素敵な一言が。
「あ、写真撮りましょうよ。泳いでるとこ。」

・・・へーへー、もっかい入水しますわ。あー、ちべた。



ま、でもイイ感じに仕上がってるから許す。


宿に帰ってホットシャワーと薬用石鹸を鬼のように使い倒したことは言うまでもない。
もしかしたらガンガーに一番祈ったのは、「業後のホットシャワーが浴びれるといいな」かも知れん。

ちなみに明けて翌日(1月4日)、ちょっと筋肉痛。



◆某レストラン。

KumikoG.H からすぐにあるレストラン“モナリザ(Monarisa)”で、友人の一押しメニュー“カツ丼”を頂く。

箸(スプーン?)を付ける前の状態だが、見た目は『・・・』。 とは言え、味は非常に美味しい。カツの衣が程よく必要以上にカタイ(つーかクリスピーだな)ところが気に入った。日本食としてのカツ丼とは少し違うが、こ れは「アリ」ですよ。
さて、ドアに貼られているシールですが、、、、、まさかココで見ようとは…。日本文化の輸出でもあるまいに。。


◆対岸でも行ってみるか。

『ヴァラナシでする事の行動は正月の三箇日に入れておきたい。』と自然と考えていた。思えば、人々のガンガーに対する信仰から、私の中にある日本人的な発 想が紐ついただけではあるが。
一応、元旦には書き初めをやった。2日目には…特に何もしていないような気が。。。

3日目、ガンガーに浮かぶ小舟に乗り、対岸にある河原まで行ってみることにする。ホントは元旦・2日を狙っていたのだが3日を含め日の出の時刻は全て濃 霧。さすがに4日まで待つ必要は無いだろう。と思い、3日目で対岸に行くことにした。

3日目の霧は元旦・2日に比べて薄めで、7時頃には風景が結構見えてきた。ボート乗りとの交は熾烈を極める。途中、やはりボートで対岸を目指しているコリ アンボーイ3人組と出会い、ジョイントすることにする。頭数で割れば大した額にもならないし、なによりもボートとの交渉でこちらが有利になる。そうこうし ているウチに時計は7時15分。太陽の位置を考えるとそろそろ時間ぎれが近い。ボート乗りもちゃんと分かっているらしく、それなりの値段で交渉が纏まる。
 

ボートに乗ってものの10分程度で対岸に到着する。不浄の地とされているため、旅行者相手の商店以外はなにも無い荒野となっている。もっとも雨期には流量 が増え川底になってしまう土地なのだが。



その対岸で日の出の写真を撮る。砂漠が近いからだろうか、大気の中にうっすらと燃える太陽はとても遠く感じる。地平線に近いところから現れればもう少し大 きく見えるのだろうが、相当高い位置にきてやっと光が届き始めるのだ。
10分程度で対岸を切り上げ、ガートへと戻る。



もはや見慣れたインド人の沐浴、というか洗濯を含めた彼らの生活を横目で眺める。



そしておきまりの「ボートを漕いでみる?」と言う提案でボートを漕ぐ我々。


◆チケットを買いに行こう。

バナラシ駅にて、次の目的地 カジュラホーへのチケットを購入する。

アラーハバードに一緒に訪れた台湾人のうち1名も南下するチケットを買うとの事で、駅までのオートリクシャーを折半する。彼女と来て良かったと思ったの は、チケットカウンターの前に長蛇の列があり、1時間はたっぷり掛かった間の話し相手に事欠かなかったことだろう。


◆なにやらパレード。

アラーハバード特攻隊隊長のメイロンさんから誘いを受けたイスラエル料理レストラン。
参加メンバーはアラーハバード特攻隊のうち、男子1名が欠けた7名。料理のオーダーは既に中東エリアの越えてきたメイロンさんに一任する。

ピタと呼ばれるパンにヨーグルトやらをのせて食べる。以前タイのバンコクでも食して居るが、こちらの方が距離が近いからだろうか、よりイスラエルらしい味 わいとなっている。

インドのみならず、世界各地でイスラエル人の旅行者をよく見かける。そんな旅行者のうち、ごく少数名は旅先の
地に腰を下ろし、こういったレストランを開いているのかな。と感慨にふけりながら、食事を口に運ぼうとしたところで、外からやたらと騒がしい音楽が流れて きた。



なんだかよく分からないが、なにやらパレードのようだ。楽しそうに踊るかれらによほど参加しようと思ったが、レストランには手を付けていない皿が並んでい る。すこしもったいない気持ちはあったが、お腹がすいている状況では、やはり料理を選択する私である。


◆その他風景写真など



写真左から
@クミコハウス下のガートにあるチャイ屋。
Aクミコハウスの屋上
B同 クミコハウス屋上から眺めるガンジス川









◆オマケの写真館


クミコハウスで出される朝飯。ノリとしてはカンペキに合宿。



元旦。朝靄と低気温の中、日々の暮らしを続けるインド人達を見る。
いや、ホントに彼らはすごい。

◇で、ウシですが、結局自力で脱出しました。

インド人達が去った後、私は彼と50cmほどの距離でお互いに見つめ合っていたのですが、「お前、がんばってあがれよ〜。」と頭の中で考えつつ、テレパ シー(?)を送ってみた瞬間(5秒後ぐらい)に突然、彼は「どっせい。」とか言いつつ、ぬかるみから抜け出したのでした。写真右の状態まで来て、また休憩 に入り、「当分休みます」と言ってるようだったので、サヨナラをした。1時間後に再度訪れたときにはもうそこに彼の姿は無かったのである。



衣料品店にて、ギャグで作ったらしい超スモールサイズの女性用下着。
やたらとノリの良い兄ちゃんからの強制で写真を撮ることになる。



インドでよく見る小さな葉巻タバコ。正確にはタバコではなく、柿の葉を巻いたもの。
低所得者層にはタバコは高級品であるため、これをタバコの代わりに吸う。
ちなみに、「タバコをくれ」という物乞いにビリーをあげても「イラネ」と言われてしまう。
写真のビリーは結構高級品。一パック20ルピー。


ガイドブックに新しいブックカバーを付けてみた図。左から、
@Lonely Planet Southeast Asia on a Shoestring、
A歩き方インド、
B歩き方ネパール、
C文庫本「深夜特急」。
何気に 旅行人の「アジア横断」が一番使える。

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